「天上天下唯我独尊(てんじょうてんがゆいがどくそん)」は、仏教における重要な言葉の一つですが、その意味は誤解されやすいものです。
一般的には、「自分だけが尊い」という意味として使われますが、本来の意味は全く異なります。
1. 釈迦誕生時の伝説と「天上天下唯我独尊」
この言葉は、釈迦が入滅する直前に弟子たちに語った言葉とされる「遺教経」に由来します。
しかし、一般的に知られている「天上天下唯我独尊」という言葉自体は、遺教経には含まれていません。
釈迦誕生時の伝説では、生まれたばかりの釈迦が東西南北に七歩ずつ歩き、右手で天を、左手で地を指さしながら、「天上天下唯我独尊」と宣言したとされています。
しかし、この伝説は後世に作られたものであり、釈迦が実際にそのような言葉を言ったという歴史的証拠はありません。
2. 本当の意味:唯一無二の尊い可能性
「天上天下唯我独尊」の本当の意味は、「天上天下に我々人間のように、唯一無二の尊い可能性を秘めた存在はいない」ということです。
「我」は、特定の個人を指すのではなく、人間一般を指します。
「独尊」は、「唯一無二の尊い存在」という意味です。
つまり、この言葉は、人間一人ひとりがかけがえのない存在であり、無限の可能性を秘めていることを意味しているのです。
3. 誤解と現代における意味
「天上天下唯我独尊」は、傲慢な態度を表す言葉として誤解されることがあります。
しかし、本来の意味は、人間存在の尊さを肯定し、自らの可能性を信じることを促すものです。
現代社会において、「天上天下唯我独尊」は、自分自身を大切にし、個性を尊重することの重要性を思い出させてくれます。
また、困難な状況に直面しても、自らの可能性を信じて道を切り開いていくための力強い言葉となるでしょう。
4. まとめ
「天上天下唯我独尊」は、人間一人ひとりの尊厳と可能性を力強く宣言する言葉です。
この言葉を正しく理解し、自分の人生を歩むための指針として活用することが大切です。
参考資料
中村元著『仏教語大辞典』東京書籍
仏教伝道協会編『仏教説話事典』大蔵出版
大谷大学真宗教学研究所編『浄土真宗辞典』法藏館
天上天下唯我独尊の本当の意味